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【ご案内】小説の一部を抜粋して掲載している場合があります。 |
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第1章 拘束からの解放 |
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石垣島から帰って |
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沖縄の石垣島旅行から帰って、現実の世界に戻っています。
夫は、「風呂!」「飯!」「寝る!」「疲れた!」などの言葉を発し、私は、「はい!」とだけ言う毎日です。
この生活が、すでに10年近く続いています。
一般的には、我が家は、夫の収入で生活しており、戸建ての家があり、適度の預金もありますので、不自由のない家庭ということができます。
私は、夫に対して、特に不満があるわけではありません。夫には、感謝をしています。
私は、多くの主婦のように、パートやアルバイトをしているわけではありません。
いわゆる専業主婦です。
私のお小遣いは、基本的に渡されていませんが、生活費として渡されている中の一部が、私のお小遣いになります。
大きな声では言えませんが、子作りが終わってからは、ほとんど夜の生活はありません。
ベッドの中で夫の手を握ると、「疲れた!」と言って、拒絶されます。
あまりにもセックスをしない期間が長いので、夫は、どのように処理をしているのか、逆に心配になってしまいます。
そのような私の生活ですから、石垣島旅行は、夢のようでした。
ほとんど観光をしない旅行でしたが、大いにストレスの解消になっています。
思うのは、1年に一度くらい、旅行ができたらと、ささやかな期待をしています。
一緒に旅行をした玲奈は、旅行を満喫できたようです。
私も楽しみましたが、やはり心残りはあります。
玲奈に先を越されて、私が、遠慮しなければならない立場になっていたからです。
そして、どこかに不完全燃焼の部分があります。
妻の立場としては、不完全燃焼は仕方がないとして、お遊びの味を知ってしまったことは、夫との生活の苦痛を身に浸みて感じるようになっています。
それで、相変わらず、うまくいかない夫婦関係です。
経済的には、何も不満はないのですが・・・
でも、石垣島での快感は、身体に染みついてしまいました。
その夜な出会いは、無いのかしら・・・
<241202> |
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新宿のデパート |
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石垣島から帰って、3日目の朝、夫との生活と石垣島での出来事の間で、私の心は、パンクしそうになっていました。
あまりにもギャップが大きいからです。
旅行という非日常の行動であることを差し引いても、その違いを埋めることができません。
それで、新宿のデパートに足が向きました。
午前10時ころのことです。
買いたいものがあるわけでもなく、心の隙間を埋めるべく、賑やかなところで自分を誤魔化そうとしていました。
婦人服売り場を何回も歩き、婦人靴売り場なども歩き、昼近くになって、CAFEでスイーツを食べました。
そして、また婦人服売り場と婦人靴売り場を歩き、何も買わずにデパートを出ました。
当然、それでストレスを解消できるはずがありません。
今日は、石垣島の気候や天候とは違い、寒い日です。
こちらでは暖かい日なのでしょうけど、気温や天候までもギャップを感じさせます。
石垣島とは違いますから、明るさや爽やかさを抑え気味にした服装で街に出ました。
それでも、目立っていたのかもしれません。
通り過ぎる人が、私に視線を向けて通り過ぎて行きます。
私は、帰ってきて、新宿の街を歩いていても、石垣島を背負っていたようなのです。
<241203> |
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男性からの声掛け |
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いくつかの視線を感じながら歩いていたとき、今までより強い視線を感じました。
視線が交錯したわけではありませんが・・・
すると・・・声が聞こえてきました。
「綺麗なお姉さん!お茶をご一緒しませんか・・・」
私は、無視して、歩き続けました。
「素敵なお姉さん、お茶を飲みましょうよ!」とさらに続きます。
なぜか石垣島のことを思い出してしまいました。
玲奈が、清野さんに褒められ続けていたこと・・・
そして、玲奈が骨を抜かれてしまったような状態になって、清野さんの誘導に身を任せていたことです。
褒められている心地良さは、快感です。
これは、玲奈だけの特権ではありません。
男性に「綺麗だ!」「素敵だ!」と言われて、悪い気分はしません。
歯が浮くようなお世辞であったとしても、心地良く感じるときがあるのです。
3回ほど「お茶を飲みませんか!」と発する声のほうを向くと、若い男性が視界に入ってきました。
紺のスーツを着て、黒い革靴です。就職活動か新米のサラリーマンそのものです。
スーツの着こなしが上手とは言えない風体ですが、比較的背が高くて、イケメンです。
私が振り返ると、彼が立ち止まりました。
「一緒にお茶を飲みたいの? 何で?」
すると、彼が・・・
「綺麗で、素敵だから!」と平然と言いました。
私が・・・
「嘘でも嬉しいわ!お茶だけでいいの?と聞くと・・・」
「はい、お茶だけで・・・」
「じゃあ、いいわ!私も少し暇をしていたから・・・お茶だけなら、一緒に飲んであげる!」
<241203> |
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